煽尼采さんのコメント: 点数順
グラン・トリノ(2008/米) | 「アメリカは、あらゆる時代・土地・国民の抜粋を収集し、サンプルを提示する。そこでは、最も単純であるような愛の物語が、様々な州、様々な人々や部族を巻き込む」(ジル・ドゥルーズ)。アメリカの終焉と新生、断裂と連結の象徴としての、グラン・トリノ。 [review] | [投票(17)] | |
バリー・リンドン(1975/米) | 一兵卒の一炊の夢。二つの母子の物語。 [review] | [投票(12)] | |
幸福〈しあわせ〉(1965/仏) | モーツァルトの音楽のように完璧な幸福の光景が、微かな亀裂によって、恐るべき光景へと変じていくこと。素晴らしい色彩設計、フォーカスやカット割りの実験性にも関らず、ミニマルな演出による最大限の効果をもあげていることの驚き。 [review] | [投票(6)] | |
七人の侍(1954/日) | 七人の侍、というより、『米と刀』。まさにザ・日本映画。今だ先端的でありまた、偉大なるオーソドクシー。 [review] | [投票(6)] | |
ドッグヴィル(2003/デンマーク=スウェーデン=仏=ノルウェー=オランダ=フィンランド=独=伊=日=米) | 舞台劇のような形式だけど、舞台から一定の距離を保つ客席からでなく、舞台の中で動き回るカメラを通して見る事で、その形式=約束事の奇妙さが覗けて見えるのがミソ。 [review] | [投票(6)] | |
フェリーニのローマ(1972/伊) | 幻想の都ローマの、光と影、虚と実、過去と現在。カメラワークとカット割り、被写体の魅力、陽気な騒々しさだけで構成されたエネルギッシュな映像。ローマの歴史とフェリーニの記憶、二つの過去。陽気さの影に漂う死とニヒリズムこそ、イメージの真の映写幕。 [review] | [投票(5)] | |
CURE/キュア(1997/日) | 黒沢清自身によるノベライズは、緻密な心理描写や、暗黒的な哲学性など、実に完璧な作品で(映画に不満な方にもむしろお勧めする)、映画の完璧ささえ霞むのが悩ましいが、映画は、その表層性ゆえに発揮される禍々しさを具現。ノイズの微妙な処理が見事。 [review] | [投票(4)] | |
十二人の怒れる男(1957/米) | 男たちは、自分の存在をぶつけ合って議論する。これは格闘技だ。闘い合う事で理解し合う、まさに‘漢(おとこ)’の世界。作品自体も、一室に役者を集めただけの、素の人間力で創られた映画。全篇で展開する激論が、最初はやや弱腰に始まるのが、重要な所。 [review] | [投票(4)] | |
儀式(1971/日) | 儀式の様式美と、様式に忠実すぎるが故の滑稽さ。不条理劇として演じられる「美しい国」。 [review] | [投票(4)] | |
少年(1969/日) | 黒い日の丸を背負う「少年」。 [review] | [投票(4)] | |
リパルジョン・反撥(1965/英) | 心理を、視聴覚的空間性の問題として捉え、演出すること。その濃密さ。モノクロームの画面が、その純粋性をより際立たせる。 [review] | [投票(3)] | |
永遠と一日(1998/仏=伊=ギリシャ) | 「バス」や「車」と、留まる時間。「白」と「海」の彼岸性。 [review] | [投票(3)] | |
めまい(1958/米) | 渦巻きの反復、緑の反復、「高さ」の反復。更には「反復」それ自体。ラブ・ストーリーとサスペンスの完璧な結合。 [review] | [投票(3)] | |
乱(1985/日) | 血糊が赤ペンキに見えようと瑕にはならない、何故なら雲の動き一つ草の色一つとっても全て黒澤の意思であるかの如き映画だから。役者の所作から衣裳、メイク、美術等悉く計算された血達磨の雛人形。無常と情念を叩きつける武満徹の楽曲が画龍に点睛する。 [review] | [投票(3)] | |
インランド・エンパイア(2006/米=ポーランド=仏) | リンチ自身の手持ちのデジカムによる撮影は、フィルムの質感を犠牲にしてはいるが、手振れや、不器用なズーミングが、覗く者=リンチの身体性を感じさせる。彼の主観に身を重ね、眼前の光景に立会う気持ちで観れば、奇妙な味わいが愉しめる。 [review] | [投票(3)] | |
夜顔(2006/仏=ポルトガル) | 世の殆どの映画は、映像の中の風景や人物を、何らかの語りの効率の下に切り貼りすることで、この豊饒さを放棄しているのだ。この名匠の手の中では、物語ではなく、時そのものが語る。 [review] | [投票(3)] | |
ダークナイト(2008/米) | 前作『バットマン ビギンズ』は“恐怖”を巡る重厚なドラマだったが、その“恐怖”と無縁なトリックスター、ジョーカーの登場が、闇の仮面を被った正義の限界を抉り出す。ヒーロー物の一つの限界へと到達した、選択、逆転、倒錯のドラマ。 [review] | [投票(3)] | |
機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/日) | この映画の真のテーマは、恐らく、戦争でも都市でもない。 [review] | [投票(3)] | |
天使のたまご(1985/日) | 処女懐胎と永劫回帰。 [review] | [投票(3)] | |
HANA-BI(1997/日) | ミニマムな表現に漲る厳しさと、それを絶妙に崩しに来る絵画の挿入。その簡潔さゆえに際立つ細部。波の打ち寄せ方や、画面を横切る猫の動きなど、フィルムに刻まれた全てが北野を祝福しているかのようだ。哀しみに充ちたプロットと、幸福な画面。 [review] | [投票(2)] |