八住利雄の映画ファンのコメント
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お国と五平(1952/日) | 時代劇となるとなぜか仇討ちを語りだす成瀬(『三十三間堂通し矢物語』は仇討ちの物語ではありませんが、市川扇升の動機は多分に仇討ち的でした)。いささか多用の気味さえある寄りのカメラワークが登場人物の感情を力強く画面に刻み込む。驚きの創出と繊細さの高次の両立という成瀬の真骨頂を堪能できる傑作。 [review] | [投票(1)] | |
台所太平記(1963/日) | 女中たちのエキセントリックすれすれの過剰演技(淡路恵子!)が受け容れられるのは、森繁久彌と淡島千景の抑えた演技がそれを受け止めているからだ。住居および女中のキャラクタ性の変化によって時代の移り変わりを描く試みは成功しており、快活な中尾ミエの登場・退場と森繁の「アパート」宣言が物語を締めくくる。 | [投票] | |
雪の喪章(1967/日) | 残念ながら私の見たプリントはすでに退色により赤みが強くなりすぎており、色彩や照明に関して評価を下すことはできない。「雪」が画面と物語の基調をなすこの映画においては、その「白」の禍々しさこそが命であったはずだと思われるのだが。 [review] | [投票(1)] | |
夫婦善哉(1955/日) | 「蝶子役は淡島千景には荷が重いんじゃないだろうか」という危惧は杞憂。健気な女性を見事に演じきっている。とりわけ科の作り方の可愛らしさ! 森繁久彌の娘を前にしてあたふたしてしまう意地らしさ! 豊田四郎の厳しい演技指導には相当泣かされたらしいが、その甲斐はあったというものだろう。 [review] | [投票(1)] | |
雪国(1957/日) | 豊田四郎と安本淳の見事な仕事。ロングテイクの多用と正確なカッティング・イン・アクションがシーン内の連続性を担保し、緩やかに情感を育む。それにより岸恵子のキャラクタの突飛さも可愛らしさとして十分に正当化されている。川渡りなど幾つかのシーンの美しさはもはや壮絶の域。芸者市原悦子の異様さも忘れがたい。 | [投票(2)] | |
四つの恋の物語(1947/日) | 豊田篇:「木登り」という素敵着想。池部良の陽性演技も好み。成瀬篇:空間は窒息気味だが芝居の統制力で見せる。鋭角的な顎が目立つこの木暮実千代はやや苦手。山本篇:最高。飯田蝶子が『長屋紳士録』級にすばらしい。音楽劇の処理も妥当。衣笠篇:意表を突く出発点は悪くないがサーカスならではの演出が後一つほしい。 | [投票] | |
暖簾(1958/日) | すばらしい。森繁久彌の好演が映画を支えていることは疑いないが、私はやっぱり中村鴈治郎に目がいってしまう。今わの際を演じる中村の凄みときたら! ほとんど全カットにわたる完璧な構図にも酔い痴れる。「風」のフィルムへの定着ぶりも感動的だ。 [review] | [投票] | |
新・夫婦善哉(1963/日) | 前作『夫婦善哉』のような奇抜な画面設計は影を潜め、長回し中心のショット構成が演技空間を可笑しみと情感で満たす。 [review] | [投票] |