アメリ、あなたはどう見ても最初からずいぶん社会に適応してるよ。幸福だよ。

誰が見ても「オシャレ！」と言われるような服装をして、それなりに学もあって（学校に行けず、親にも勉強をみてもらえない子どもを私は知っているよ）、特にストレスもなさそうな職場で働いてて、生活するのに困らないだけの収入もあって、だからこそ、好きなものに囲まれた夢の一人暮らしもできて、週一の愛すべき父との交流もできて。おまけに素敵な隣人までいて。

だから、どうして八百屋のおじさんがあんなにひねくれてしまったのか、を考える前にいきなり仕返しに走ってしまったのだろうね。

私だったら、あの店員をどうすればなぐさめることができるんだろ、ということを先に考えるよ。傷ついている人がいるならば、傷つけた人を恨む前に、まずはその人に笑顔になってほしいと願うよ。

私の好きなものは、そういうものなの。偽善的だと言われたとしても、そういうものなの。

もし私があの店員で、あなたがボスにしたことを知ったなら、泣いて泣いて泣きまくる。そんなことは望んでやしなかった、私の怒りや哀しみは、あなたの楽しみや自己実現のためにあったものではないと、きっと静かに、（だけど）心から憤りを感じると思う。

でも、人々の一瞬の表情を切りとったスピード写真を集めつつも、一見、人の持つ内面的なものに興味を示しているかのように見えつつも「どんな子だった？　ブロンド？　ブルネット？」といったような「まず最初に興味がいくのはずいぶんありきたりで表層的なことなのね」な男の人を恋人に選んだあなたには、これから多くの困難が待ち受けているような気がしないでもない。

だから、とりあえず「今度こそがんばってね。」というエールは送りたいと思う。それこそがイジワルな監督の用意した、最大の難関である気がするから。