★5 | 驟雨(1956/日) | まだ郊外だった頃の世田谷。夕暮れには帰路について、妻と肩を並べて歩く勤め人達。通り雨の後、土の香りが漂う泥濘道。今は失われた世界の美しさを惜しまずにはいられない。 | [投票(2)] |
★4 | ブラックブック(2006/オランダ=ベルギー=英=独) | レジスタンスに身を投じたヒロインの前に広がる薄暗闇。ヴァーホーヴェンの映画らしく、これは戦いの物語だ。その敵はナチでも裏切り者でもない。神なきこの世の不条理なのだ― [review] | [投票(6)] |
★2 | アヴァロン(2001/日=ポーランド) | これを撮りにポーランドまで?押井守らしい幽玄な怪異譚だが、30分で十分な話を、錆びた水の中に沈められたように陰気な絵で、延々とやられては…。印象に残ったのは音楽のみ。 | [投票] |
★4 | フーリガン(2005/米=英) | 素晴らしき暴力マニアたちの世界。アドレナリンによって覚醒する意識。部族的同志愛。生ける伝説として仰がれる男。欧州フットボール文化の底にある「闇の奥」を垣間見ることができる。 | [投票] |
★3 | 大日本帝国(1982/日) | 脚本家の「天皇の軍隊」に対する思いはともかく、80年代東映大作映画特有のあざといメロドラマ的演出に辟易。このテの湿った描写が日本の戦争映画をどれほど駄目にしているか…。 | [投票] |
★4 | 遠すぎた橋(1977/英=米) | 作戦開始前の高揚、華やかな進撃、錯綜する戦況、すべてが終わった後の虚脱…。スポーツの大試合を中継するように、両軍の攻防を俯瞰で描く散文的な語り口に英国人らしさを見た。 | [投票] |
★4 | 河内山宗俊(1936/日) | 遊びとひねりに満ちた語り口の底にある含羞。権威や強者に背を向け、世間の片隅で生きることを選んだ男たち。そんな生き方にさえ彼らは気恥ずかしさを感じてしまうらしい。 [review] | [投票(3)] |
★5 | 浮草(1959/日) | 旅回り一座のゆるーい雰囲気。そこで展開される人間模様。好色と嫉妬、狡猾と悲哀、純情と媚態。赤と緑を効果的に配した色彩設計…すべてが響き合って絶妙。まるで音楽のようだ。 | [投票(2)] |
★4 | 天使のはらわた 赤い教室(1979/日) | メロドラマ的展開は男のひとりよがりの裏返しだとは思うが、暗く、重く、サディスティックで、底のない深淵を覗き込んでいるようだ。終盤はほとんどホラー映画になっている。 | [投票] |
★4 | マッチポイント(2005/英=米=ルクセンブルク) | 「欲望」は隠されなくてはならない。上流階級を夢見る狡猾な男。その隠された欲望を煽るアメリカ女。そして、ゲームの勝者はより卑劣な方。ニヒリスティックな結末にアレンの非情を見た。 | [投票] |
★3 | ローズ・イン・タイドランド(2005/カナダ=英) | 死臭に満ちた荒地。美しい過去の残骸。怪奇な隣人たち。お伽話の力を武器に生き抜くヒロイン。夢と現が混濁したギリアムらしい映画だが、原作を読んだ方が面白そうな気も…。 | [投票] |
★4 | ライトスタッフ(1983/米) | ひたすら速さを追求するパイロット達の稚気溢れる利己主義。国運を賭けたプロジェクトも彼らにとっては遊びでしかない。こういう格好いい映画(文化?)が日本にないのが淋しい。 | [投票(1)] |
★2 | ソドムの市(1975/仏=伊) | うーん…なんだこれは?まるで石ころを呑まされているようだ。ここまで「異物」であることに徹した映画も珍しい。しかし、パゾリーニなりの美学が存在することに敬意を表して、★2つ。 | [投票] |
★4 | 地獄に堕ちた勇者ども(1969/伊=独=スイス) | 朝靄の中に響くバイク部隊の轟音…。ナチズムというモンスターが誕生する歴史的瞬間のエクスタシーと闇。音楽にたとえればへヴィ・メタル。人の心に潜む負の力を共振させる映画だ。 | [投票(1)] |
★4 | GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995/日) | ネット版『世にも怪奇な物語』。鈍色に輝くチタニウムの頭蓋骨。怪物じみた骨格が水溶液の中、人の形へと変化してゆく、おぞましくもエロティックな姿。このシーンだけでも観る価値はある。 | [投票] |
★4 | 放浪記(1962/日) | 貧乏で、不細工、おまけに男運も悪い。恋に敗れ、文学に勝った無頼の作家の僻みと意地、悲しみと反抗の昭和文壇戦記。酷いこともサラリと描く成瀬のクールな描写に痺れた。 | [投票] |
★3 | 野良犬(1949/日) | 黒澤の現代劇が苦手な私にとって、この映画は鬼門だ。テレるということを知らない大仰な演出。この世には白と黒しかないかのような勧善懲悪。力感溢れる映像は素晴らしいとも思うが。 | [投票] |
★3 | 祇園囃子(1953/日) | 『祇園の姉妹』のピカレスクな闊達さはどこへいった?世間並みの道徳など拒否したところにこそ芸者の自由はあると思うのだが。この映画の溝口は綺麗事になっていやしないだろうか? | [投票] |
★4 | 草の上の昼食(1959/仏) | 青い空に白い飛行機。木々や下生えの濃く淡い緑。陽だまりの金や茶。木陰の紫と濃紺。メタリックグレーのスポーツカー。そして、翻る赤いスカート。この色彩美だけでも観る価値はある。 | [投票(2)] |
★4 | あにいもうと(1953/日) | 川のこちら側では時は緩やかに流れる。しかし、眠っているようなこの農村でも、やはりすべてのものは崩れゆき、すべての人は失望に行き着く…。いつも通り、成瀬の非情は容赦がない。 | [投票(1)] |