[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
世代的な問題もあろうが、ワシら(1960年前後生まれ)は「未来を失ったまま大人になった世代」である。 思春期の入り口で万博を経験し、きらびやかなチューブの中を走るエアカーの夢をみたまま、その同じ目で浅間山山荘事件をリアルタイムで眺めてしまい、大人達が挫折し、「未来に希望なんかないのさ」とシニカルに人生そのものを投げ出した世代。 『ブレード・ランナー』の酸性雨が降り続けるL.A.の光景にリアルな匂いを感じた世代。
そのワシらの心のツボにイチイチ大ヒットする台詞&小道具の数々。 「あーワシも20世紀博に行ってみてえ!!」何度この台詞を鑑賞中に吐いたことか!
しかし、人生は続くのだ。 例え今が「ツマラナイ」&「小市民的な」シアワセであろうとも。 進むべき道は決まっているのだ。 その道を歩むことに希望を見いだし、力強く歩くための映画。 こーいう映画を社会派というのだ、ソダーバーグよ(あ、ソダーバーグ本人は「自分は社会派」とは思ってないな、多分)
この映画が『千と千尋の神隠し』くらい大当たりすれば、日本はもっと良い国になるよ。未来に輝かしい希望が宿るね、キット。
〜2002/4/12追記〜
テレビで放映されて、再見。 特にラストシーンに深い感銘を受けた。 思い出したのはインドの詩人タゴールの詩。 ちょっとうろ覚えだけれど、こんな感じの詩だったはず↓
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「あなたの子供は、あなたの子供ではない」 「あなたを通って生まれてくる、生への渇望そのもの」
「あなたは子供の未来を夢見なさるな」 「こどもは未来の家に住む住人なのだから」
「子供は未来向かって放たれる矢」 「弓引くあなたの手にこそ喜びよ、あれ」
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ラスト、しんちゃんがケンとチャコを思いとどませる言葉を吐くのと同時にハトが飛び出してくる。 コレは未来のシンボルそのもの。 しかも、このハトは子育ての最中である。
大人になるのを拒否し、いつまでも夕焼けの町で暮らしていたいと願ったモラトリアムなカップルは、自分たちの王国(帝国?)にいつの間にか、「子育て」という危険分子(?)が侵入していることに気がつく。
つまり、人間と生まれたからには、「生きたい」と願うからには、「子供を持ち、その子供に未来を託す」という道は避けては通れないのだ。
しんちゃんは大人達が予想も出来ない未来そのものを背負うシンボルとして登場する。 自分の肉体を使い、足で階段を上りながら、「ソレでもオラは生きたい!」「大人になりたいぞ!!」と言う。
「今はこんな時代だから、子供を持つ気になれない」という人がいる。 モチロン、その個人の考えは人それぞれであるし、その意見を頭ごなしに否定するモノではないが、ワシは未来を子供に託したい。 だから、子供を持った(コレからも持ちたい。出来るモノなら)
その子供達が実際手にする未来の姿がドンナモノなのか想像も出来ないし、先に死んでしまうワシにとっては全くあずかり知らぬ未来の世界ではあるが。 しかし、この「人が生きる」という事をアクマでも肯定したい。 「生きたい」「愛したい」と願う限りは、子供を持つことはごく自然ななりゆきである。
ラスト、2000GTに乗った二人の行き先は何処なのだろう? きっと何処かの町で子供を持って、この人生という楽しい戦争に参戦してくるのだろう。 「おかえり、父ちゃん、母ちゃん」という台詞には、ケン&チャコへのメッセージが含まれているようにも感じた。
やはり、トンデモナイ名作である。
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