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★4 | Broken Rage(2024/日) | ほとんど自然主義文学。それも、急に澄んだ目になる老人のような、自意識の濁りのない、透明さの。ただあるがままに、時に唖然とするほど寒く、時に腹が引き攣れる程おかしい。そこには、どこまでも付き纏う自戒も、自己憐憫も、老残の悲哀も、自己顕示欲も何もない。脱ぎ捨てた覆面の内側は、すっからかんで明るく呆けている。生きてるだけで、喜劇。 [review] | おーい粗茶 | [投票(1)] |
★4 | サイコ・ゴアマン(2020/カナダ) | 何かと大時代で冗談の通じない残虐宇宙怪人がクレイジー鬼畜少女に手玉に取られる・・・というどこかで聞いたような設定で、笑いから特撮演出まで、何だか懐かし新しいニューレトロの趣。ミミの明るい七変化外道ぶりが楽しく(逸材ではなかろうか)、暴政に喘いでも何となく満更でもなさそうな兄ルークのリアクション演技も可笑しい。そしてやっぱり特撮の面白さ。アホな設定、顛末、ヘビメタも含め、はっきり言って好き。 [review] | t3b, ひゅうちゃん | [投票(2)] |
★3 | AKIRA(1988/日) | キーマンの「動機」や立ち位置が不明確で、宇宙だ記憶だのとモチーフをちらつかせられても理解の快感に直結せず、終盤の腰砕けと停滞で大友の脚本力・説得力欠如を致命的に露呈。しかし脚本の貧困諸共「ぶっ壊す」というアナーキズム偏向の自爆的破壊描写が映え、四の五の言ってんじゃねえよとでも言いたげな金田と鉄雄の咆哮に苦笑しつつ握り拳を固めてしまうのもまた事実。強引かつ浅く、なればこそ熱い。評価が難しい。 | モノリス砥石 | [投票(1)] |
★2 | ゴジラ-1.0(2023/日) | 敗戦のルサンチマンを濯ぐためのゴジラという筋立てに特攻モチーフと山崎貴のポピュリズムが結合するという相性としては最凶の組み合わせ。時勢も踏まえて危なっかしい。いいように勘違いする層が一定以上存在するのが今の日本だ。国は批判しているが特攻自体の批判はしていないように見えるバランスの悪さに頓着しないVFX遊びの無邪気さがまた邪悪で、非常に居心地が悪い。佐々木蔵之介の芝居が激寒。 [review] | ペンクロフ, 薪, Myrath, おーい粗茶ほか6 名 | [投票(6)] |
★3 | ボーはおそれている(2023/米) | 愛よりも憎しみを確かめあう仁義なき戦い。帰省って確かにそんなものなのかもしれない。罪悪感が現実認識を歪める信頼できない語り手の画面にその観察が乗せられて、全てが哀しくオモロな人生の比喩表現になる。そんな中で開陳されるホアキンの痴態が面白くないわけがなく、ネイサンの垂れ眉などナイスキャスティングなのだが、どうにも突き抜けず、「壮大な茶番走馬灯」の域を出ない。 [review] | クワドラAS, けにろん | [投票(2)] |
★4 | 時の支配者(1982/仏=独=ハンガリー=スイス) | 迸る善性が、か細い一本の糸を通じ、時空を超えて宇宙(そら)を駆けて繋がり世界を変える、「めぐり愛、宇宙編」。ファンタジーであってほしくないファンタジー。エンディングには深い祈りが込められており、シンプルながらまごう事なき名曲である。 [review] | irodori | [投票(1)] |
★3 | シン・仮面ライダー(2023/日) | 木梨憲武のドロップキックの方がよほど身体性を感じさせる・・・という冗談はともかく、主人公がいつ「笑えば・・・いいと思うよ」って言うかと思いながら観ました(二つの意味で)。馬鹿馬鹿しくて、正直結構楽しんだんですが、ふざけてる暇があったら次のステップに進んでいただきたいです。 [review] | ロープブレーク, おーい粗茶, けにろん | [投票(3)] |
★4 | フォールガイ(2024/米) | メタと小ネタをやり過ぎでグダっているのは否めないが、それを含めて愛おしい。熱い血肉が通っている。落とし前は全て職人仕事でつける。そしてそれは全て職人同士の信頼に裏付けされる、という心意気が本物。クライマックスの痛快さ、確信犯的バカに、予期せず落涙。作り手全ての皆さんに、サムズアップ!
[review] | けにろん | [投票(1)] |
★4 | 聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017/英=アイルランド) | 開胸手術、ドクドクと脈動し蠢く心臓を接写でとらえるグロテスクなオープニング。「美しい」人間の薄皮が剥かれてあらゆる悪意が臓物のようにごろりと転がされていく作劇は、この開巻から予告されている。悪意、演出はハネケ、キューブリックからのいいとこどり。バリー・コーガンの上目遣いで相手の目の奥、心の奥底をのぞき込むような青い瞳が、狂気で濁っているのではなく信念で澄んでいるのが怖い。 [review] | pinkmoon, ジェリー, ぽんしゅう, けにろん | [投票(4)] |
★4 | 化け猫あんずちゃん(2024/日=仏) | 山下敦弘!いまおかしんじ!ウヒャヒャと逸る心と真相を隠し、私事だが初めて家族総出で洗礼のために劇場に足を運んだのである。結果はかなり好評だったのだが、私個人としては「洗礼」の意味での狙いは外したかもしれない。要はヘンだがヌルいトトロ+クレしん+湯浅正明という受け止め方以上でも以下でもなかったのだ。いや、その受け止めでも全然いいし、とても面白かったんだけど。 [review] | ペンクロフ | [投票(1)] |
★1 | 残穢 住んではいけない部屋(2015/日) | どこまで辿っても人間の闇、闇、闇。そしてそれは終わらんのだとこねくった設定で勿体ぶるのだがそりゃそういうもんやろがいとしか思えない。その「奥」がないのは作り手も演じ手も善良過ぎるからだろう。脱ジャンプスケア志向もアイデアの欠如を晒しただけで壮絶に眠い虚無的仕上がり。黒沢清の邪悪、白石晃士のアホなエネルギーが眩しく見える。 | t3b | [投票(1)] |
★4 | 蛇の道(2024/仏=日=ベルギー) | (オリジナル版未見)原版の評判並みに、恐ろしいものを観た感はある。実際、冒頭のノイズ、寒々とした曇天とパリの街並みのシーケンスから始まった胸騒ぎと心の乱れが最後まで止まらず、嫌な汗をかいた。しかし、監督らしい脱臼的な黒いユーモア(?)や都合良すぎる展開がシュールに転回する妙な味もあり、最終的には頭と心に徹底的にイタズラされた感が強い。 [review] | おーい粗茶, ジェリー, ぽんしゅう | [投票(3)] |
★3 | デューン 砂の惑星PART2(2024/米) | じっくりと豊かに流れる「時間」の構築、ヴィルヌーヴの長所が息を潜めてしまっている。セカセカと筋の消化に追われるヴィルヌーヴなんて見たくない。珍しく撮影も悪く、不用意な人物のアップだらけで、巨大なはずの世界がえらく狭い場所に感じる。ツギハギのアクションにジマーの轟音を被せる反復も無造作で、ノーランがスベった時と同じ失望があった。前作の方が遥かに格上。 [review] | 月魚, ゑぎ | [投票(2)] |
★3 | 黒い家(1999/日) | 黒沢清並の意識的にとち狂った場所選定と、「正常」のバランスを崩した戯画的なフリークの狂騒によるブラックコメディ感、やたらと汗をぬぐう蓮司や怠く構えて足を引きずって歩く町田への生理的嫌悪感など、堂に入ったいやらしさが光る。しかしハッタリ感が放擲されて白ける演出も多々。うまくバランスを崩すのが肝の作劇であればこそ、ハッタリにも堅牢さが欲しい。大竹の底なし亜空間アイズは面目躍如。 [review] | 寒山拾得, けにろん | [投票(2)] |
★4 | ニューオーダー(2020/メキシコ=仏) | 劇中、結婚式を除けば劇伴は冒頭とラストのみ。冒頭は、「死者だけが戦争の終わりを見た」というタイトルの抽象画をバックに、ショスタコーヴィチの交響曲第11番の一楽章導入。冴え冴えとした空気に滲む流血の予感。ここからすでに破滅の足音が凄まじい。「侵食」の映画。
[review] | ゑぎ | [投票(1)] |
★4 | アイアン・スカイ(2012/フィンランド=独=豪) | プロパガンダ・コント、ワグナー引用、ナチスネタなどの頭良い系の笑いから、盥が頭にごっつん系の古典的笑い、突然真顔になるラストなど、按分と采配が程よく、とてもクレバー。基本はタイムスリップ+カルチャーショック型のテンプレ的な笑いだけど、「カルチャー」がナチス、っていうのが良いセンス。モンティパイソンが撮っても面白いだろうけど、きっと悪酔いするだろう。安心して気楽に酔える、よい毒。 [review] | ジェリー, ぽんしゅう | [投票(2)] |
★4 | THE BATMAN ザ・バットマン(2022/米) | 「またお前か」の感はあるが、もう日本人にとってのゴジラみたいなフォーマットなのだろう。「探偵」の性質が強調された、恐らく史上最弱のバットマン。驟雨に打たれるアメリカの自分探しと襲来するアイデンティティの喪失・転倒の反復。念入りに編まれた既視感こそが肝。ゾーイが超絶美人で眼福。 [review] | けにろん | [投票(1)] |
★4 | ミークス・カットオフ(2010/米) | 『アギーレ』嫡流の現代的・神話的成果。一本道の大河に流されるのではなく、先導者と一行はあくまで荒涼とした大地を自分の足で歩き、迷い、深淵(先住民)と対峙する。そして深淵がアメリカを見返す。「フロンティア」は未だにあるのか?ミシェルはアメリカの「何」に落とし前をつけるのか?迷えるアメリカの「現在地」。倒木に刻むLOSTの四文字の静かな戦慄。無駄カットなしの緊張感。 | けにろん, ぽんしゅう | [投票(2)] |
★3 | ミッドサマー(2019/米=スウェーデン) | 狂気とは確信である。当事者には忌避される理由がわからないから隠そうともしない。全てが開けっぴろげに晒される。闇がない、白夜。聖域がない。壁がない。同じ共同体の暴力でも、空間の扱いについて、幾多の壁で仕切られる『ローズマリーの赤ちゃん』の都市的空間(聖域の集合体)との対比から見ると前半は面白いが、後半はそのコンセプトと矛盾していく。 [review] | おーい粗茶, ぽんしゅう, disjunctive | [投票(3)] |
★4 | 仁義なき戦い(1973/日) | 「親」の元で「兄弟」が殺し合う。そして「親」が「子」を殺す。何処でどう道を間違うたんかのう、という松方の呟きは荘厳ですらあり、誇張なしに神話の語りだと思う。また、「このようにしか在ることができなかった青春」が、敗戦後という舞台を得て生々しく、哀しい。巨視的に観てもミニマムに観ても隙のない、神話のとても良い切り取り方。 [review] | ジェリー, 緑雨, けにろん, ぽんしゅう | [投票(4)] |