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DSCHさんの人気コメント: 更新順(1/22)

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★3デューン 砂の惑星PART2(2024/米)じっくりと豊かに流れる「時間」の構築、ヴィルヌーヴの長所が息を潜めてしまっている。セカセカと筋の消化に追われるヴィルヌーヴなんて見たくない。珍しく撮影も悪く、不用意な人物のアップだらけで、巨大なはずの世界がえらく狭い場所に感じる。ツギハギのアクションにジマーの轟音を被せる反復も無造作で、ノーランがスベった時と同じ失望があった。前作の方が遥かに格上。 [review]月魚, ゑぎ[投票(2)]
★3黒い家(1999/日)黒沢清並の意識的にとち狂った場所選定と、「正常」のバランスを崩した戯画的なフリークの狂騒によるブラックコメディ感、やたらと汗をぬぐう蓮司や怠く構えて足を引きずって歩く町田への生理的嫌悪感など、堂に入ったいやらしさが光る。しかしハッタリ感が放擲されて白ける演出も多々。うまくバランスを崩すのが肝の作劇であればこそ、ハッタリにも堅牢さが欲しい。大竹の底なし亜空間アイズは面目躍如。 [review]寒山拾得, けにろん[投票(2)]
★3ボーはおそれている(2023/米)愛よりも憎しみを確かめあう仁義なき戦い。帰省って確かにそんなものなのかもしれない。罪悪感が現実認識を歪める信頼できない語り手の画面にその観察が乗せられて、全てが哀しくオモロな人生の比喩表現になる。そんな中で開陳されるホアキンの痴態が面白くないわけがなく、ネイサンの垂れ眉などナイスキャスティングなのだが、どうにも突き抜けず、「壮大な茶番走馬灯」の域を出ない。 [review]けにろん[投票(1)]
★4ニューオーダー(2020/メキシコ=仏)劇中、結婚式を除けば劇伴は冒頭とラストのみ。冒頭は、「死者だけが戦争の終わりを見た」というタイトルの抽象画をバックに、ショスタコーヴィチの交響曲第11番の一楽章導入。冴え冴えとした空気に滲む流血の予感。ここからすでに破滅の足音が凄まじい。「侵食」の映画。 [review]ゑぎ[投票(1)]
★4アイアン・スカイ(2012/フィンランド=独=豪)プロパガンダ・コント、ワグナー引用、ナチスネタなどの頭良い系の笑いから、盥が頭にごっつん系の古典的笑い、突然真顔になるラストなど、按分と采配が程よく、とてもクレバー。基本はタイムスリップ+カルチャーショック型のテンプレ的な笑いだけど、「カルチャー」がナチス、っていうのが良いセンス。モンティパイソンが撮っても面白いだろうけど、きっと悪酔いするだろう。安心して気楽に酔える、よい毒。 [review]ジェリー, ぽんしゅう[投票(2)]
★4THE BATMAN ザ・バットマン(2022/米)「またお前か」の感はあるが、もう日本人にとってのゴジラみたいなフォーマットなのだろう。「探偵」の性質が強調された、恐らく史上最弱のバットマン。驟雨に打たれるアメリカの自分探しと襲来するアイデンティティの喪失・転倒の反復。念入りに編まれた既視感こそが肝。ゾーイが超絶美人で眼福。 [review]けにろん[投票(1)]
★4ミークス・カットオフ(2010/米)アギーレ』嫡流の現代的・神話的成果。一本道の大河に流されるのではなく、先導者と一行はあくまで荒涼とした大地を自分の足で歩き、迷い、深淵(先住民)と対峙する。そして深淵がアメリカを見返す。「フロンティア」は未だにあるのか?ミシェルはアメリカの「何」に落とし前をつけるのか?迷えるアメリカの「現在地」。倒木に刻むLOSTの四文字の静かな戦慄。無駄カットなしの緊張感。けにろん, ぽんしゅう[投票(2)]
★3ミッドサマー(2019/米=スウェーデン)狂気とは確信である。当事者には忌避される理由がわからないから隠そうともしない。全てが開けっぴろげに晒される。闇がない、白夜。聖域がない。壁がない。同じ共同体の暴力でも、空間の扱いについて、幾多の壁で仕切られる『ローズマリーの赤ちゃん』の都市的空間(聖域の集合体)との対比から見ると前半は面白いが、後半はそのコンセプトと矛盾していく。 [review]おーい粗茶, ぽんしゅう, disjunctive[投票(3)]
★4仁義なき戦い(1973/日)「親」の元で「兄弟」が殺し合う。そして「親」が「子」を殺す。何処でどう道を間違うたんかのう、という松方の呟きは荘厳ですらあり、誇張なしに神話の語りだと思う。また、「このようにしか在ることができなかった青春」が、敗戦後という舞台を得て生々しく、哀しい。巨視的に観てもミニマムに観ても隙のない、神話のとても良い切り取り方。 [review]ジェリー, 緑雨, けにろん, ぽんしゅう[投票(4)]
★4アンブレイカブル(2000/米)プリンスみたいな扮装と変な髪型で説教し、アメコミ店で頬杖ついて車椅子上で放心するサミュエルさんの画だけで彼のファンとして★4確定なのだが、例え腰砕けの馬鹿話としても捨ておけない。物事には裏表、対極があり、英雄は敵がいてこそ輝く(アメリカ的病理)。出会いは同時に決別の合図となる。そして、妄信、狂信、誤信、その形態がどうあれ、信じることの「熱」が人を動かす。本質に迫る意志があり、切々と哀しい。 [review]おーい粗茶, けにろん[投票(2)]
★3レッド・ロケット(2021/米)「アメリカン・ドリーム、最後の乱痴気騒ぎ」なのか。『フロリダ・プロジェクト』で対岸的遠景に捉えられていた「夢の国」ディズニーランドすらここにはなく、更に刹那的、断末魔的な狂騒。トランプの大統領就任前夜の影も手伝い、見てくれに反してしんどい。ラストカットの主人公のぎこちなく引き攣った笑みとストロベリーの不敵な笑み・・・この国で今「大丈夫」って何なのだろう。 [review]ぽんしゅう, けにろん[投票(2)]
★4哀れなるものたち(2023/英)ようこそ、この滅びと生の不思議の国、「人間の世界」へ。シン・『シザーハンズ』+不思議の国のアリスの趣。哀れなるものたち、抑圧と解放、被害者と加害者を己の中に同居させる不思議な獣。世界のバランスに関するグロテスクな寓話。ややもすると宮崎駿の生き霊が憑依している。面白いが、撮影はやり過ぎ。 [review]月魚[投票(1)]
★2サタンタンゴ(1994/ハンガリー=独=スイス)鐘の音、汚いアコーディオンのメロディがこびりつく。体臭や口臭、饐えた臭いに満ちている。ノアの洪水のように雨がいくら降っても何も洗い流せず、その感傷も含めて何もかも無価値だ。カットの長さの意図も分かる。ニヒリズムの極北を語る不退転の覚悟は無二のものがあるが、まあ、有り体に言って、大嫌いな映画だ。何か嫌いなものに立ち会えば、逆説的に、自分が何が好きかわかる。そのことは大変有意義なことだと思った。 [review]ぽんしゅう[投票(1)]
★4女王陛下のお気に入り(2018/アイルランド=英=米)宮廷の溢れに溢れた装飾と調度品を余すところなく捉える洪水のような情報量なのだが、反比例してその空疎さが際立つ。ここには何もかもがあるが、何もない。衣装とカツラは剥がされるためにあり、ご馳走は病に罹り嘔吐するために摂取され、調度品は破壊され吐瀉物を受け止めるためにそこに置かれ、あらゆる物は本来の意味をなさない。 [review]けにろん, disjunctive[投票(2)]
★4ロブスター(2015/アイルランド=英=ギリシャ=仏=オランダ=米)(多分)少子化、右傾化、からの全体主義が煮詰まると「愛」という「概念」が死ぬらしい。『散歩する侵略者』に「概念」を奪われてメチャクチャなままに放置されたような世界観。間違いだらけの「愛」の実践(「講義」のバカバカしさ)から「じゃあ正解の愛ってなんだっけ」の宙づり感へ。愛の嘘を暴いて冷ややかに笑うレア・セドゥの「間違ってるのに正しい変なテロ」が不思議。 [review]jollyjoker, ぽんしゅう, けにろん[投票(3)]
★4聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017/英=アイルランド)開胸手術、ドクドクと脈動し蠢く心臓を接写でとらえるグロテスクなオープニング。「美しい」人間の薄皮が剥かれてあらゆる悪意が臓物のようにごろりと転がされていく作劇は、この開巻から予告されている。悪意、演出はハネケキューブリックからのいいとこどり。バリー・コーガンの上目遣いで相手の目の奥、心の奥底をのぞき込むような青い瞳が、狂気で濁っているのではなく信念で澄んでいるのが怖い。 [review]ジェリー, ぽんしゅう, けにろん[投票(3)]
★4サイコ・ゴアマン(2020/カナダ)何かと大時代で冗談の通じない残虐宇宙怪人がクレイジー鬼畜少女に手玉に取られる・・・というどこかで聞いたような設定で、笑いから特撮演出まで、何だか懐かし新しいニューレトロの趣。ミミの明るい七変化外道ぶりが楽しく(逸材ではなかろうか)、暴政に喘いでも何となく満更でもなさそうな兄ルークのリアクション演技も可笑しい。そしてやっぱり特撮の面白さ。アホな設定、顛末、ヘビメタも含め、はっきり言って好き。 [review]ひゅうちゃん[投票(1)]
★3TAR/ター(2022/米)だからベルリン・フィルは嫌いなんだ・・・という冗談(?)は措くが、兎も角人間たちが首を絞め合い足を引っ張り合う窒息状態で、「延々そんな話かい」とうんざりさせられる(誰もまともに音楽の話をしていない)。裏テーマとして、はるか天上から、その乱痴気騒ぎを後目に「音楽の本質」が静かに嘲りを投げかけているイメージがある。『アマデウス』におけるモーツアルトの嘲笑に近いものを感じる。 [review]ジェリー, ぽんしゅう, けにろん[投票(3)]
★4鳥(1963/米)「理由もなく人を襲うか?」いや、「人を襲うのに理由が要るのか?」理由がないものに心と秩序を掻き乱される人間たち。理由はないはず。しかしヘドレンは災厄の中に自らへの懲罰を見出してしまう。私は鳥の声が、顔のない、個のない「マス(大衆)」の暴力と嘲笑、或いは悲鳴のように聞こえた。 [review]緑雨, シーチキン, けにろん, ペンクロフほか6 名[投票(6)]
★5首(2023/日)This is the Modern Yakuza Honnohji.不謹慎な上層ヤクザ・コントの可笑しさに対置して大量生産される「カタギ」の死。意外とこんなもんだったんじゃないの、という嘲笑と無常感。ニヤニヤ笑い、引き笑い、哀しみが同居するグロテスクな傑作。みんなけったいや。 [review]24, もがみがわ, けにろん, ぽんしゅうほか8 名[投票(8)]