[コメント] アメリ(2001/仏)
平成13年12月11日午前、都内某映画館に於いてジャン・ピエール・ジュネ監督作『アメリ』を観たペペロンチーノ氏(34)が大変な衝撃を受けるという事件が起きた。同氏は大笑いしたかと思うと突然泣きだし、その奇怪な行動に思わず前の席の客が振り返ったとも伝えられる。また同氏は、「トリュフォーやゴダールといったヌーベルバーグの影響も色濃く見られる作品だ」としながらも、珍しくパンフレットを買ったり、突然スプーンを振り回したり、証明写真を撮ったり、石を投げまくったり、恋をしたくなったりと、かなり気が動転していて冷静な論評ができない模様。「こんな状態はここ数年なかったこと。今年の映画はもちろん、これまでの映画の採点まで見直す可能性が出てきた」(関係者)との声が上がる一方、「映画館に数度足を運ぶことやDVD発売の際には購入することも視野に入れなければならない。非常に危険な状態です」(事情通)と不安視する声もあり、今後の動向が注目される。
続報
一夜明け、ペペロンチーノ氏は一見平静を取り戻したかにみえた。しかし、一日中ニコニコと笑顔が絶えず、また仕事帰りにはサントラ盤を購入してしまうなど、後遺症は当面続きそうだ。「誰かに話したくてしかたなかった」と言う同氏だが、たいして映画に興味の無い世間の風は冷たく、「それより『ハリー・ポッター』はどう?」と聞かれ、やや意気消沈しているとも伝えられる(AP通信)
続報2
12月25日、ペペロンチーノ氏は二度目の『アメリ』鑑賞をした。「間隔も開いたし大丈夫です」と冷静な鑑賞に自信をみせていた同氏だったが、上映が始まるやいなや、脳細胞は総立ち、アドレナリンやらドーパミンやらモンダミンやら訳のわからん脳内物質が出まくり、顔はほころび涙腺は緩み何度も鳥肌が立つといった興奮状態だった。 また、二度とも同伴した夫人とは些細ないさかいの後の鑑賞というお互いやや不機嫌な状態だったものの、終了時には二人ともすっかり笑顔に戻り、寒風吹く中いつもより少し背筋を伸ばして優しい目で世界を見ながら歩き、おまけに夫人にコートを買ってやっちまうという余計な(?)支出までした。なお、二人は年明けには三度目の鑑賞を予定しているという。(ロイター)
続報3
平成14年1月7日、ペペロンチーノ氏は三度目の鑑賞を行い、イギリスの称号“サー”に相当する“ペー”の称号をこの映画に与えると発表した。今後同氏は本作を『アメリ』様と呼ぶこととなり、これはホラーマニアが『ゾンビ』様と呼ぶのに等しい名誉なことである。公開中の映画に与えられるのは極めて異例。帰りには念願のクリームブリュレを入手した同氏だが、これほど感化されたのは『ミツバチのささやき』『ゴッドファーザー』以来。近年では『双生児』でも同様の現象が起きかけたが、さすがに眉をつぶすことはなかった。(共同通信)
あまりの賞讃ぶりに非難の声もある。「下品」「だれる」「長い」等に関して記者団から問われると、「上品なだけの作品はいくらでもある。だが人生ではない」「リズムが落ちるのは現実への着地には必然」「私は長いとは感じない。むしろ二度目、三度目の方が短く感じたぐらいだ。なぜなら私はこの映画の中にいつまでも身を置いていたかったから」等と答えた。「恋すること」と「現実との直面」を同期させることで、誰もが経験したはずの「恋の不安」を見事に描いた点が同氏のツボを刺激し、心身ともに健康になったという。 「恋する女性はどんなに悪い想像をしても好きな男は絶対に殺さない」。同氏はこの映画で多くを学んだ。(警視庁記者クラブ)
おわび
かなり動転していたので「冷静な文体を」と思い新聞調にしたのですが、やたら長くなってしまいました。何度も何度も書き加えてすいません。最後までお付き合いいただた方々ありがとうございます。これで打ち止め。
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